そんな疑問にお答えします。
私はパテックフィリップノーチラスの価格推移のグラフを見た時、正直驚きました。
「えっ、なんでこんなに価格が高騰しているの?」
自分の目を疑ったくらいです。
価格高騰の理由が気になって、調べてみる事に。
調べてみると、我々住んでいる日本だけの問題だけではなく、世界共通の問題が浮かび上がりました。
この記事では、パテックフィリップノーチラスが高騰している原因を、かみ砕いて説明しています。
読んでいくうちに、ニュースなどで報道している難しい内容も、世の中の状況も理解できるようになります。
少し難しい事が書かれていますが、最後までお付き合いください。
目次
「パテックフィリップノーチラスに大打撃」材料費の高騰が一番の理由?
パテックフィリップノーチラスもそうですが、高級時計の部品のほとんどは、ステンレススチールで作成されています。
ステンレススチールを精製するのに必要な鉱物が、ニッケルです。
ニッケルの価格は2〜3年前あたりから、高騰しています。
なぜ、ニッケルは2~3年前から高騰しているのでしょうか?
掘り下げていきましょう。
ニッケルの高騰の原因は新規事業⁉
ニッケルが使用される割合は、ステンレススチールに7割、その他3割ぐらいでした。
ここ数年ステンレススチールに使用されるニッケルの割合が、減ってきています。
それは、新しい事業に使われているからです。
新しい事業とは、EV自動車のことです。
下の図は輸送別の世界自動車在庫を表したグラフです。
水色は小型乗用車、青色は軽小商社、緑色はバスを示しています。
引用:IEA Global EV Outlook 2021
グラフから分かるように、EV自動車の在庫がここ数年グーンと増えています。
EV自動車にはニッケルが大量に使用され、EV自動車の在庫が増えるとニッケルの使用量も増えます。
今まで腕時計に使用していたステンレススチールのニッケルが、EV自動車の方に使われる。
ステンレススチールの供給量が少なくなり、価格が高騰したというわけです。
自然任せ⁉エネルギー問題
ニッケルを精製するのに大量の電気が必要になります。
電気は、石炭やガスなどの化石燃料を使った火力発電や、扱いを間違えるととても危険な原子力発電。
自然の力を使った風力発電等の再生エネルギーなどから作られています。
環境の為に脱火力発電と言われていますが、まだまだ火力発電に頼っている状況です。
火力発電に使用される化石燃料は、OPECにより生産量を調整され、生産量ベースで世界シェアの1割のロシアが出し惜しみをしています。
OPECとは
オペックと読み、Organization of the Petroleum Exporting Countriesの略です。
日本語に訳すと石油輸出国機構となります。
国際石油資本などから石油産出国の利益を守るため、1960年に設立されました。
※国際石油資本:アメリカ、ヨーロッパ系の巨大石油会社7社のこと。
化石燃料の生産量減少が化石燃料の価格を上昇させ、その結果電気代が上がります。
ニッケルを作る時に大量の電気を使用しますので、精製したニッケルに上昇した電気代を上乗せしなければばりません。
よって、ニッケルが高騰するのです。
これらの要素がニッケル高騰の全てではありません。
色いろな要因が絡み合って、ニッケルは高騰しています。
やはり、ウクライナ戦争の影響が大
やはりニッケル価格の高騰の理由は、ウクライナ戦争の影響が大きいでしょう。
「鉄鋼新聞」という鉄鋼の事を専門に扱っている新聞があり、そこには「ニッケルの高騰原因はウクライナ戦争の影響だ」と、書かれています。
引用:アダチ鋼材株式会社
あまりにもニッケルが高騰しすぎたため、LMEの取引が停止する事態にもなりました。
LMEとは
London Metal Exchangeの略で、ロンドン金属取引所の事をさします。
1877年に設立した取引所で、世界最大規模の非鉄金属専門の先物取引所です。
対象のアイテムは、銅、鉛、スズ、アルミニウム、ニッケルなど、非鉄と言われている金属です。
銅は世界の9割がLMEで取引を行っていて、他の取引も含めLMEの取引価格は国際的な指標価格となっています。
ウクライナ戦争の原因は、ウクライナがNATOに加盟しようとしたことです。
冷戦時代ならともかく、情報社会の現代では「ウクライナがNATOに加盟しても、ロシアには何も影響はない」と、私は思うのですが。
1日も早く、戦争が終わる日が来ることを願うばかりです。
パテックフィリップノーチラスにも襲う、深刻な後継者不足
パテックフィリップノーチラスを作っているスイスもそうですが、ほとんどの国は人口が減り後継者不足が問題視されています。
真剣に取り組んでいかないと、腕時計業界が無くなってしまうかもしれません。
時計業界も後継者不足
日本の企業だけではなく、パテックフィリップ社も深刻に悩んでいるのが後継者不足です。
この動画は、50年以上時計技師をしているフィリップ・デュフォー氏がBBCの取材に応じた動画です。
出典:YouTube
BBCとは
ブリティッシュ・ブロードキャスティング・コーポレーション(British Broadcasting Corporation)の略で、日本語では英国放送協会と訳します。
BBCは日本でいうと、NHKの公共放送局のことです。
後継者不足の理由をフィリップ・デュフォー氏は詳しく述べていませんが、文明の進化が後継者不足に拍車をかけたのではないでしょうか。
電気自動車(EV)が普及するにつれて内燃機関、つまりエンジンが必要とされなくなります。
エンジンが必要とされなくなれば、エンジンの魅力を後世に伝える事ができません。
腕時計業界もこれと同じ事が、言えるでしょう。
携帯、スマートウォッチの普及で機械式時計が必要とされなくなる。
機械式時計が必要とされなくなれば、機械式時計の素晴らしさを伝えることはできません。
機械式時計のすばらしさを後世に伝えることができなければ、腕時計業界は錆びれてくる。
そうなると、機械式時計技師の担い手になろうとする若者が減る。
機械式時計が作れる人が減れば、機械式時計の希少価値が高くなります。
その結果、パテックフィリップノーチラスなどの機械式時計の価格が高騰する。
文明の進化が人々の生活を楽にした分、古き良き文化が廃(すた)れていくは寂しいものです。
スイスも高齢者社会
なぜスイスでは、機械式時計技師の担い手が減少しているのでしょう。
それは日本と同じく、スイスも高齢化社会が進んでいるからです。
高齢化社会の原因とされているのが、合計特殊出生率の低下です。
合計特殊出生率とは
一生の間に産むことができる子どもの数の平均の事です。
少しめんどくさい計算式にあてはめて算出し、時代や地域ごとの出生率を比べる目的として使用します。
下の図は日本とスイスの合計特殊出産率の推移表したグラフです。
出典:世界経済のネタ帳
スイスでは、合計特殊出生率は年々下がっていき、最近は1.48人になっています。
合計特殊出生率2.07人以上いないと、今の人口を維持できません。
合計出生率1.48人のスイスでは次世代を担う若者が増えず、歳を取った人が増える高齢化社会が進んでいることが分かります。
次の図は、スイス全年齢の人口ピラミット一覧表です。
引用:Graph to chart
お腹が出ている男性のような形をしていて、若い年代の人数が少ない事が分かります。
日本やスイスだけではなく、世界的に高齢化の波が押し寄せてきています。
日本やスイスと反対に世界のリーダーのアメリカは、若者の人口が増えています。
経済対策も、高齢化対策もアメリカを見習わなけばいけませんね。
職人になるには時間が必要
先程紹介したフィリップ・デュフォー氏も語っていましたが、職人になるにはとにかく時間がかかります。
一人立ちできる職人になるには早い人で10年、一生勉強と言っている人もいます。
スイスでは、時計職人を育成しようと国が先頭に立ち専門学校を運営し、時計職人を取り巻く環境はそれほど悪くありません。
しかし、コツコツと地道な作業を行い、目が痛くなるような細かい作業を繰り返す。
一人前になるまでに10年かかるとなると、敬遠しがちな職業かも知れません。
時計職人になる為の学校に通っている人の動画です。
インタビューの内容より、1つ1つ部品を手作りしているところが、時計職人の凄さを物語っています。
出典:YouTube
パテックフィリップノーチラスも例外ではない‼新型コロナの影響
新型コロナが流行してから数年経ちました。
一体いつ終焉(しゅうえん)を迎えるのだろうと、皆さんも思っていることでしょう。
新型コロナの影響は、高級時計の業界まで及んでいました。
ストレス発散?高級時計を買う
新型コロナが流行りだした2019年。
世界がまず初めに取った対策は、人と会わない事です。
必要以上に出歩かない。
仕事はリモートワークにする。
日本だけではなく、海外も同じでした。
計画をたてた旅行も無くなり、楽しくおしゃべりする女子会や忘年会もキャンセル。
人々はストレスを抱える毎日です。
ストレスを発散する場所を模索していた人々は、モノを購入してストレス発散することを選びました。
旅行に行く為に貯めていたお金や、飲み会に行く時に払うはずだったお金があります。
「そうだ。パテックフィリップノーチラスを買おう。」と、思ったのかは知りませんが、高級時計の購入者が増えたことは事実です。
新型コロナが流行りだした2019年に比べ、去年の2021年はスイスから高級時計の輸入が21.2%も増えました。
購入者が増えれば、当然世の中に出回っている数量は減ります。
数量が減れば希少価値が高まり、価格が高騰する。
この繰り返しで価格が上昇していくのです。
「経済回復?」Withコロナ対策
新型コロナの新規感染者数が落ち着いてきていますが、まだまだ予断を許さない日々が続いています。
日本もだいぶ、新型コロナの対策が緩んできました。
世界に目を向けると、新型コロナ対策が日本以上に緩んでいる国があります。
それは、アメリカ合衆国です。
アメリカは、新型コロナウイルスの感染がある程度広がっても経済を動かす「ウィズ・コロナ政策」を採用しています。
ワクチンの効果と、死亡者の減少が相まって、縮小していたアメリカ経済が一気に回復しました。
国内総生産(GDP)の実額も、すでに新型コロナ禍以前の水準に回復しています。
つまり、アメリカは好景気なのです。
その結果、時計や宝飾品などの高級品需要も絶好調です。
スイス時計の米国向け輸出も2021年は2020年に比べ55.7%も増えました。
それだけ、パテックフィリップノーチラスなどの高級時計はアメリカで売れています。
あとは先程述べた通り。
購入者が増えれば、当然世の中に出回っている数量は減ります。
数量が減れば希少価値が高まり、価格が高騰する。
この繰り返しで価格が上昇していきます。
もしかしたら、パテックフィリップノーチラスの価格上昇も、そろそろ終わりの時期を迎えているのかもしれません。
アメリカの中央銀行にあたるFRBは、金利を上げ続けています。
このままFRBが金利を上げ続ければ、パテックフィリップノーチラスなどの高級時計の価格が、下落する可能性がでてきたためです。
今後、パテックフィリップノーチラスなどの高級時計の価格推移から目を離すことができません。
パテックフィリップノーチラスの価格推移からわかる高騰する理由!:まとめ
まとめとしまして
- 「パテックフィリップノーチラスに大打撃」材料費の高騰が一番の理由?
- パテックフィリップノーチラスにも襲う、深刻な後継者不足
- パテックフィリップノーチラスも例外ではない‼新型コロナの影響
を紹介してきました。
パテックフィリップノーチラスの価格高騰は紹介したこと以外にも、沢山の原因があります。
折角の機会ですので、パテックフィリップノーチラスの価格高騰の原因を探求してみてはいかがでしょうか。
調べて勉強したことは、きっと近い将来役に立つはずです。