そのような疑問にお答えします。
1979年から続く伝統的なSUVであるメルセデス・ベンツのGクラスは、その中でもディーゼルエンジンを搭載したモデルが人気です。
Gクラスの歴史を辿(たど)ると、似たような名前のモデルが存在していました。
それが、g350ブルーテックです。
g350ブルーテックは、現行のg350dと何が違うのでしょうか?
そこでこの記事では、g350ブルーテックとg350dの違いを詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
g350ブルーテックとg350dの違い
ブルーテックとは何か
g350ブルーテックとg350dの違いを、様々な角度から比較しています。
メモを取りながら読み進めると、理解が深まりますよ。
目次
g350ブルーテックとg350dの違いは、販売時期
結論から述べますと、g350ブルーテックとg350dの違いは、販売時期の違いです。
2013年にGクラスに追加されたのがg350ブルーテックで、2016年以降の物はg350dです。
それぞれの特徴や違いについて、詳しく見ていきましょう。
g350ブルーテック
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メルセデス・ベンツが2013年9月に発表したW463型Gクラスの中で、最も環境性能に優れたモデルがg350ブルーテックです。
g350ブルーテックの特徴は、3.0L V型6気筒ディーゼルエンジンにあります。
メルセデス・ベンツが独自に開発したBlueTEC(以下ブルーテック)という技術を採用しました。
高圧燃料噴射や可変ノズルターボなどの先進技術により、高いパワーと低い燃料消費量と排出ガスを実現。
また、尿素水溶液を使用して窒素酸化物を還元するシステムも搭載されており、ディーゼル車ながらクリーンな走りを提供しています。
g350ブルーテックは、その希少性や魅力から、多くのファンに支持されているのも魅力の1つです。
35周年記念モデルやモノトーンカラーのモデルなど、さまざまなバリエーションが存在し、これらの特別仕様車は、限定数が少なく、高い人気と価値を誇ります。
g350ブルーテックは、最後に乗りたいクルマと言われるほどの魅力を持ちます。
その個性と性能、そして歴史は、他の追随(ついずい)を許さないレベルです。
このようなクルマは、二度と現れないでしょう。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,530mm×1,810㎜×1,970mm |
車両重量 | 2,510kg |
排気量 | 2,986㏄ |
駆動方式 | フルタイム4WD |
最高出力 | 211ps |
最大トルク | 55.1㎏・m |
燃費(JC08モード) | 8.5km/L |
g350d
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日本で人気ナンバーワンのGクラスは、g350dです。
g350dは、直列6気筒ターボエンジンを搭載し、3,000㏄の排気量でパワフルな走りを見せます。
悪路でもびくともしない走行性能と、全高2m近いクロスカントリー型4WDとは思えないコーナリングの安定感が魅力的。
g350dは、環境性能にも優れています。
WLTCモードで9.9Km/Lという燃費をマークしており、サイズと車両重量を考えれば驚異的な数字でしょう。
また、g350dは、最新の安全機能を満載しています。
車間距離を保持する「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」。
車線変更時の安全性を高める「ブラインドスポットアシスト」などの先進的なシステムが装備されており、ドライバーの負担を軽減します。
さらに、「マルチビームLEDヘッドライト」や「アテンションアシスト」などの機能も備えており、夜間や長距離運転でも安心して乗ることができるでしょう。
g350dは、パワーと環境性能、安全性という3つの要素を高次元でバランスさせた優れた車です。
日本で最も人気のあるGクラスにふさわしい魅力を持っています。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,660mm×1,930㎜×1,975mm |
車両重量 | 2,460kg |
排気量 | 2,924㏄ |
駆動方式 | フルタイム4WD |
最高出力 | 286ps |
最大トルク | 61.2㎏・m |
燃費(WLTCモード) | 9.9km/L |
両者を比較してみると
g350ブルーテックとg350dのスペックを比べた表が、次の通りになります。
g350dブルーテック | g350d | |
全長×全幅×全高 | 4,530mm×1,810㎜×1,970mm | 4,660mm×1,930㎜×1,975mm |
車両重量 | 2,510kg | 2,460kg |
排気量 | 2,986㏄ | 2,924㏄ |
駆動方式 | フルタイム4WD | フルタイム4WD |
最高出力 | 211ps | 286ps |
最大トルク | 55.1㎏・m | 61.2㎏・m |
燃費(JC08モード) | 8.5km/L | 9.9km/L |
画像出典:WebCG
g350ブルーテックとg350dをくらべてみると、ほとんど同じスペックの車です。
販売時期が違っただけで、なぜ名前が違ったのでしょうか。
それは、2016年にGクラスがマイナーチェンジされた際に、メルセデス・ベンツは全世界で統一したモデル名を採用することにしたからです。
そのため、g350ブルーテックは、g350dという名称に変更されたのです。
エンジン自体は基本的に同じものですが、出力やトルクが若干向上し、外装や内装も一部変わりました。
外装内装の違いは、この動画をみて把握して下さい。
出典:YouTube
g350ブルーテックの「ブルーテック」とは、何のこと?
先にネタバレすると、ブルーテックとはメルセデス・ベンツが独自に開発したエンジンです。
g350ブルーテックだけではなく、g350dにも搭載しています。
ブルーテックとは、どの様な特徴があるのでしょうか。
一緒に探っていきましょう。
ブルーテックとは、地球に優しいエンジン
メルセデスベンツは、地球環境に対応するために新しいエンジンを開発しました。
それが、ブルーテックです。
ブルーテックの最大の特徴は、AdBlue(尿素水溶液)という液体を使うことです。
AdBlueを排ガス中に噴射することにより、ディーゼルエンジンから出る有害なガスである窒素酸化物(NOx)がアンモニアに変化します。
アンモニアは、SCR触媒コンバーター(選択式還元触媒)と併用して、化学反応を起こし水と窒素に分解されます。
このようにブルーテックは、地球環境に優しいディーゼルエンジンなのです。
難しく感じるかもしれませんが、要するにこういうことです。
ディーゼルエンジンで走るときは、必ず窒素酸化物(NOx)という体や地球環境に悪い影響を与える有害なガスが出ます。
でも、AdBlueという液体をかけると、有害なガスが水と窒素になるのです。
有害なガスが水と窒素になる様子は、下の図を見ればイメージしやすいと思います。
出典:株ヤナセ
AdBlueは定期的に補充しなければなりませんが、排出ガスはDPFと尿素SCRシステムのおかげできれいにされます。
DPFとは
ディーゼル微粒子捕集フィルターのことです。
排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集し、自動的に燃焼(DPF再生)処理します。
そして、厳しい排ガス規制である欧州ユーロ6dの基準値をクリアしながらも、ディーゼルエンジンのポテンシャルを最大限に発揮できるようになりました。
これが、メルセデスベンツのブルーテックの魅力なのです。
豆知識
欧州ユーロ6d(Euro 6d)とは、2014年に欧州連合(EU)が施行した自動車の排出ガス規制です。
この規制は、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、粒子状物質(PM)などの有害物質の上限値を定めています。
ユーロ6dは、特に窒素酸化物(NOx)の排出規定量が厳しくなりました。
ディーゼル車は、従来1kmあたり180mgだった窒素酸化物の排出量が、最高80mgまで制限されることになったのです。
ブルーテック開発されたワケ
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べると、燃費が良いのでCO2の排出量が少なくなります。
これは、環境に優しいというメリットです。
しかし、です。
ディーゼルエンジンにも欠点があります。
それは、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)という有害ガスを多く排出することです。
これらの有害ガスは、大気汚染を引き起こしたり、人体に害を与えたりする可能性があります。
例えば、地球温暖化。
地球温暖化の原因の一つが、窒素酸化物です。
窒素酸化物の中でも、一酸化二窒素(N2O)というガスは、温室効果ガスと呼ばれ、太陽の熱を逃がさずに地球に留めておきます。
その結果、地球の気温が上がるのです。
人体にも悪影響があります。
窒素酸化物や粒子状物質は、呼吸すると肺や血液に入ってきます。
肺や血液に入ると、細胞を傷つけたり、血管を詰まらせたりするのです。
呼吸器や循環器の病気が起こったり、悪化したりします。
最悪の場合、癌の原因になってしまうかもしれません。
そこで、欧州や日本では、ディーゼルエンジンの排出ガスを厳しく制限する規制を作りました。
欧州では2009年からユーロ5規制というものが始まったのです。
ユーロ5規制では、NOxの排出量をユーロ4規制よりも半分以下にすることが必要でした。
日本でも2009年から平成17年排出ガス規制というものが始まります。
平成17年排出ガス規制では、NOxやPMの排出量を平成14年規制よりも約90%減らすことが必要でした。
これらの規制に合わせるために、メルセデス・ベンツはブルーテックエンジンという新しいエンジンを開発したのです。
ブルーテックエンジンは、環境性能だけでなく、走りや静かさも良くなりました。
バランスシャフトやサイレントチェーンという部品を使って、振動や音を小さくし、車種によってエンジンの設定を変えて、パワーやトルク(回転力)を最適にしたのです。
「ブルーテックに対抗」ライバルメーカーの取り組み
ベンツはブルーテックという技術で、環境問題に対応してきました。
他のメーカーは環境に対して、どの様な対応をしているのでしょうか?
早速、見ていきましょう。
グリーンディーゼルエンジン/トヨタ
トヨタのディーゼル車は、クリーンディーゼルエンジンと呼ばれる技術を採用しています。
クリーンディーゼルエンジンとは、排出ガスの中の窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)を低減するために、尿素水溶液や触媒などを使うエンジンです。
トヨタのディーゼル車のランドクルーザープラドやハイラックスなどのSUVや、レジアスエースやハイエースなどの商用車に搭載されています。
クリーンディーゼルエンジンの特徴の一つが、燃料噴射システム「コモンレールシステム」です。
コモンレールシステムとは、高圧ポンプで燃料を一定の圧力に保ち、電子制御で燃料噴射量やタイミングを調整するシステム。
このシステムにより、燃料の微細化や均一化が可能になり、不完全燃焼が原因となり排出されるススや排気ガスの排出を抑えることに成功しました。
コモンレールシステムの登場により、ディーゼルエンジンの最も大きなデメリットだった有害物質の排出をクリアできるようになったのです。
もう一つの特徴は、排ガス浄化装置です。
トヨタのクリーンディーゼルエンジンは、尿素水溶液を噴射する前にDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)で粒子状物質を除去。
その後にSCR(選択触媒還元)触媒で窒素酸化物を除去します。
これに対してメルセデスベンツのブルーテックは、尿素水溶液を噴射する前にDOC(酸化触媒)で一部の窒素酸化物を除去し、その後にDPFとSCR触媒で粒子状物質と残りの窒素酸化物を除去します。
メルセデスベンツの方が排ガス浄化装置が複雑で高性能ですが、トヨタも日本国内では厳しい排出ガス規制に適合しています。
グリーンディーゼルエンジンの仕組みや特徴について、わかりやすく説明した動画です。
本文を読んだ後にこの動画をチェックしておくと、より理解しやすくなるでしょう。
出典:YouTube
SKYACTIV-D/マツダ
ディーゼルエンジンを多く扱っているマツダが開発したSKYACTIV-Dは、圧縮比を低くすることで燃焼効率や環境性能を高めた技術です。
直列4気筒1.5Lから2.2Lまでと、直列6気筒3.3Lというエンジンに採用されています。
特に3.3Lエンジンは、2022年にCX-60に搭載された新型エンジンで、マツダ独自の空間制御予混合燃焼(DCPCI)という燃焼方式を搭載しました。
SKYACTIV-Dの特徴は、ディーゼルエンジンの圧縮比を従来の18程度から14程度までに下げたことです。
これにより、燃料と空気をよく混ぜて低温燃焼させることができ、NOxやPMの発生を抑えることができました。
マツダはさらに、ターボ技術や卵形燃焼室などを開発し、燃費や排出ガス性能を向上させ、NOx後処理装置が不要なほどクリーンな排出ガスを実現したのです。
マツダのSKYACTIV-Dは、DPF以外の排ガス浄化装置や尿素水溶液などの消耗品が不要です。
一方、ベンツのブルーテックは、SCRシステムやDOC(酸化触媒)などを使っており、尿素水溶液などの消耗品が必要です 。
この点がベンツのブルーテックと大きく異なります。
なぜ、マツダがこのような技術を開発できたのでしょうか?
それは、既存のエンジン設計や生産ラインを大きく変更する必要があることが関わっているのです。
マツダは約30年ぶりに新しいエンジンモデルを開発したため柔軟に対応できましたが、他のメーカーはそうはいきません。
新しいエンジンモデルを開発するチャンスを逃さなかったマツダは、自社開発した技術で環境問題への対策を行えたのですね。
SKYACTIV-Dについて解説している動画です。
専門用語が多くて理解しにくいですが、画像からイメージできます。
出典:YouTube
BluePerformance/BMW
BMWはクリーン・ディーゼルエンジン「BluePerformance(ブルーパフォーマンス)」を開発・採用しました。
BluePerformanceは、アルミニウム合金製のクランク・ケースや高圧燃料噴射装置などで軽量化と高効率化を達成できたのです。
NOx吸蔵還元触媒とDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)でNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)を排出ガスから除去しました。
これらの技術により、環境への負荷を減らしながらも高い走行性能と低燃費を両立したディーゼルエンジンです。
BluePerformanceは、日本のポスト新長期規制や欧州のEURO 6規制など世界で最も厳しい排出ガス基準にも対応しています。
BluePerformanceは、尿素水溶液を噴射してNOxを還元するSCRシステムと、酸化触媒とDPFを組み合わせたDOC(酸化触媒)システムを採用しています。
これはベンツのブルーテックと同様のシステム。
ただし、ブルーテックはBluePerformanceよりも高温で作動するため、PMの再燃焼が容易になっています。
【えっ、まだ知らないの?】g350ブルーテックとg350dの違い:まとめ
まとめとしまして、
- g350ブルーテックとg350dの違いは、販売時期
- g350ブルーテックの「ブルーテック」とは、何のこと?
- 「ブルーテックに対抗」ライバルメーカーの取り組み
を、ご紹介してきました。
g350ブルーテックとg350dの違いは、販売時期が違うだけでほぼ一緒なモデルということが分かりました。
クルマを選ぶときには、走行性だけでなく、環境面も考慮しなければならない時代です。
ブルーテックのように地球環境や人体への影響を最小限に抑えるクルマを選ぶことが、私たちだけでなく未来の人たちにとっても大切ですね。