そのような疑問にお答えします。
メルセデス・ベンツのGクラスは、オフロード走行に適した歴史あるモデルです。
その中には、環境にやさしいディーゼルエンジンを搭載したモデルも存在しています。
「g350ブルーテック」は、ディーゼルエンジンのモデルの草分け的モデルです。
g350ブルーテックは、高い動力性能と低燃費を両立したクリーンディーゼルエンジンを搭載。
そして、このエンジンは、日本のディーゼル排ガス規制に適合するほど、環境に優しいものでした。
では、どんな技術を使用して、世界一厳しいと言われている「ディーゼル排ガス規制」に適合したのでしょうか。
そして、g350ブルーテックとは、どんなクルマだったのでしょう。
そこで今回は、g350ブルーテックの特徴と、ディーゼル排ガス規制に適合した技術について、わかりやすく解説します。
この記事を読んでわかること
ディーゼル排ガス規制に適合した技術「ブルーテック」とは、どの様な装置なのか
g350ブルーテックの概要
専門的な言葉が出てきますが、できる限りカンタンに解説しています。
気軽に読み進めてください。
目次
そもそもブルーテックとは、何?
そもそも、ブルーテックとは何でしょうか?
ブルーテックの技術について理解していないと、g350ブルーテックの特徴を説明できません。
早速、ブルーテックについて解説していきますね。
ベンツ独自のディーゼルエンジンが、「ブルーテック」
ブルーテックとは、ディーゼルエンジンの排気ガスをきれいにするベンツ独自の技術のことです。
ディーゼルエンジンは、燃費が高くて力強いですが、環境に悪影響を及ぼす物質も多く排出。
ブルーテックは、それらの物質を二つの段階で除去しています。
まず、黒煙と呼ばれる微粒子状物質と、一酸化炭素や炭化水素といった有害ガスです。
これらの有害ガスは、人間の呼吸器や循環器に障害を引き起こしたり、温室効果を強めたりします。
ブルーテックは、ディーゼル酸化触媒とディーゼル微粒子捕集フィルターという装置を使って、これらの物質を99パーセント以上除去するのです。
ディーゼル酸化触媒は、有害ガスを酸素と結びつけて無害なガスに変え、ディーゼル微粒子捕集フィルターは、微粒子状物質を細かい網で捕まえて、熱で燃やしてしまいます。
次に、窒素酸化物という物質を取り除きます。
窒素酸化物は、オゾン層を破壊したり、酸性雨を引き起こしたりする物質。
ブルーテックは、尿素選択触媒還元という装置を使って、窒素酸化物を80パーセント以上減らします。
尿素選択触媒還元は、尿素水溶液(AdBlue®)という液体を排気ガスに加えることで、アンモニアを精製。
作られたアンモニアは、触媒コンバーターという装置で、窒素酸化物と反応して、窒素と水に分解します。
ブルーテックは、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する技術。
ディーゼルエンジンのメリットを活かしながら、デメリットを克服することで、環境に配慮したディーゼル車をベンツは実現しています。
ブルーテックは、環境規制に対応するために開発
ブルーテックの歴史は、2005年にメルセデス・ベンツが新しいV型6気筒ディーゼルエンジンのOM642を発表したことから始まります。
OM642は重量車にはブルーテックを、軽量車にはNOx吸蔵還元触媒を使って排出ガスをクリーンにしました。
2006年、アメリカ向けにブルーテックを搭載したE320CDIを発売します。
E320CDIは、2004年モデルから段階的に適用される排出ガス規制強化「Tier2」合わせて、NOx吸蔵還元触媒と酸化触媒を組み合わせたシステムを使いました。
その後、ブルーテックは、MLクラスやGLクラス、Gクラスなどにも搭載され、日本でも2010年から販売が始まります。
日本向けのブルーテックは、尿素水溶液を排出ガスに噴射することで、窒素酸化物を水と窒素に分解するという仕組みを使いました。
このシステムは、欧州の排出ガス規制ユーロ6にも合格するほどの高いクリーン性能を持っています。
しかも、ディーゼルエンジンの魅力を損なわず、環境にやさしいエンジンとして評価されました。
2013年には、Eクラスにブルーテックを搭載したE350ブルーテックが発売。
E350ブルーテックは、OM642を改良したエンジンが使われています。
尿素水溶液の噴射量を最適化することで、燃費性能と排出ガス性能をさらに向上させました。
2015年には、GLクラスにブルーテックを搭載したGL350ブルーテックが日本市場に追加されます。
GL350ブルーテックは、E350ブルーテックと同じエンジンを使い、大型SUVでもありながら、高い燃費性能と低い排出ガスを実現し、快適な走りと環境への配慮を両立しました。
ブルーテックは、ディーゼルエンジンの魅力を損なうことなく、環境にやさしいエンジンとして、今後もさらなる進化を遂げていくことでしょう。
ブルーテックの未来
ブルーテックは、近い将来消えてしまうかもしれません。
なぜなら、環境規制に対応しきれなくなるからです。
ブルーテックは、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化するベンツの技術。
ですが、ディーゼルエンジンは、環境に悪いエネルギー源に変わりありません。
世界は2050年にカーボンニュートラルの目標を達成するため、温室効果ガスの排出量を減らすゼロエミッション車(電気自動車や水素自動車など)に移行しようとしています。
ベンツも、ブルーテックをハイブリッド技術やプラグインハイブリッド技術と組み合わせて、環境性能を高めてきました。
しかし、それでもゼロエミッション車には及びません。
そこで、ベンツはブルーテックとは別に、電気自動車や水素自動車を開発しています。
ブルーテックは、今後ゼロエミッション車に置き換えられ、無くなってしまう可能性が高いのです。
ですが、これは一つの可能性です。
ブルーテックの未来は、環境規制や技術革新や市場動向など、さまざまな要因によって変わっていくでしょう。
「Gクラス初」ブルーテックを搭載したモデルが「g350ブルーテック」
結論から述べると、Gクラスに初めてブルーテックが搭載されたのが、g350ブルーテックです。
現行モデルとの違いはどこにあるのでしょうか。
詳しく紹介していきます。
g350ブルーテック
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gクラスは、1979年に登場した伝説的なSUVで、その個性的なデザインと頑強さは今も変わりませんが、最新の技術を取り入れて進化し続けています。
34年間の歴史の中で、四輪駆動車の最高峰として、多くのファンに愛されてきました。
日本では、23年ぶりにディーゼルモデルが発売されます。
その名は、「g350BlueTEC(ブルーテック)」です。
g350BlueTECは、3.0リッターV型6気筒BlueTECエンジンを搭載。
このエンジンは、高圧コモンレールや可変ターボなどの最先端の技術で、211PSの出力と540Nmのトルクを生成し、重量級のオフローダーにもパワーと効率性を兼ね備えます。
さらに、3.0リッターV型6気筒BlueTECエンジンは、尿素水溶液「AdBlue(アドブルー)®」を排気ガスに混ぜることで、窒素酸化物(NOx)を大幅に削減する「BlueTEC」システムも装備しています。
BlueTECは、日本の厳しいディーゼル排出ガス規制にも対応しており、環境にも優しい性能を誇ります。
つまり、g350ブルーテックは、gクラスの伝統と革新を見事に融合した一台なのです。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,530㎜×1,810㎜×1,970㎜ |
重量 | 2,510kg |
排気量 | 2,986cc |
燃費(JC08モード) | 8.9km/L |
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g350d
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g350dは、g350ブルーテックの後継として、同じ3.0リッターV6ディーゼルエンジンを搭載しながら、パワーと燃費の両立を実現したモデルです。
Gクラスの歴史と未来を表現するデザインや、メルセデス・ベンツの最先端のテクノロジーも魅力的でしょう。
g350dのエンジンはg350ブルーテックと比べて、出力が245psに、トルクが61.2kgmに向上しました。
高圧コモンレールや、可変ターボなどの技術の進化によるものです。
gクラスの重さにも負けない力強さを持ちながら、環境にも優しいエンジンで、WLTCモードでの燃費は10.5km/Lと、gクラスの中では最も良い数値を記録しています。
g350dのデザインは、Gクラスの伝統を受け継ぎつつ、現代的な要素を取り入れています。
外観は、丸いヘッドライトにマルチビームLEDを採用。
フロントグリルやボンネットも洗練させたり、ウインカーやバンパーを目立たせたりと、先進性と個性を兼ね備えたフロントデザインが印象的です。
内装は、広々としたダッシュボードに高性能なコックピットディスプレイを搭載。
ジェットエンジンをイメージしたエアコン吹き出し口やアナログ時計を配置したりと、上質な空間を演出しています。
g350dは、Gクラスの魅力をさらに進化させた一台。
強力で省エネなエンジン、モダンで個性的なデザイン、革新的で安全なテクノロジーを搭載しており、オフロードからオンロードまで、幅広い走行性能を発揮します。
g350dは、Gクラスの新たな代表と言えるでしょう。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,575㎜×1,860㎜×1,970㎜ |
重量 | 2,550kg |
排気量 | 2,986cc |
燃費(JC08モード) | 10.5km/L |
g350dを紹介している動画です。
Gクラスはブラックがシックでカッコイイと思っていました、ホワイトも素敵です。
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g400d
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g400dは、g350dよりも数字の分だけエンジンの性能が向上しました。
最高出力は330馬力、最大トルクは71.2kg-mで、g350dと比べて44馬力と10.2kg-mの増加。
最大トルクは、1200rpm〜3200rpmまでの広い範囲で発生します。
このため、g400dはg350dに比べて加速力や高速性能が優れ、0から100km/hまでの加速はg350dでは7.4秒ですが、g400dでは6.4秒と1秒も短縮されています。
g350dとg400dの大きな違いは、G manufakturプログラムに対応しているかどうかです。
G manufaktur
メルセデス・ベンツのGクラス専用の完全受注生産オプション。
細部までこだわりたい人に適しており、最高レベルのクラフトマンシップによって仕立てられます。
外装色は標準色以外にも12色の有料カラーが用意され、内装色は23色の中から自由に選択可能に。
また、ステアリングやルーフハンドルにはツートーンの仕上げを施すことができ、ナッパレザーやダイヤモンドステッチなどの高級な素材や装飾も利用できます。
G manufakturプログラムを適用したg400dは、パワフルで豪華なディーゼルSUVとして、他に類を見ない存在感を放つモデルです。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,575㎜×1,860㎜×1,970㎜ |
重量 | 2,550kg |
排気量 | 2,986cc |
燃費(WLTCモード) | 9.7km/L |
g350dとg400dの違いを解説している動画です。
この動画を見れば、g350dとg400dの違いがよりはっきりと理解できます。
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ブルーテックに挑むライバルたち
g350ブルーテックは、環境に配慮しながらも走りの楽しさを追求した車です。
しかし、それと同等のディーゼルエンジンを備えたモデルは他のメーカーにもあります。
それらのモデルの特徴や性能を見ていきましょう。
X5 xDrive40d/BMW
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BMWのX5 xDrive40dは、2022年2月に登場した最新のディーゼルエンジン車です。
X5 xDrive40dは3リッターのV6ターボディーゼルエンジンを搭載しており、340psのパワーと700Nmのトルクを発揮します。
この走行性を実現できた理由は、可変ジオメトリーターボを使っているからです。
可変ジオメトリーターボとは
エンジンの回転数に応じて排気ガスの流量を調整することで、ターボラグを防ぐターボチャージャーのこと。
ターボラグが少なく、低回転からのレスポンスに優れています。
また、排気圧力を制御できるため、ウェイストゲートバルブが不要になりました。
ガソリンエンジンよりも熱効率が高く、燃費が18〜38%も向上。
燃費が向上したおかげで給油の回数が少なく済み、一回の給油で約1,200kmも走れ、CO2の排出量を平均で25%も削減しています。
重量をほぼガソリンエンジン車と同じぐらいに軽減するために、アルミニウム合金を多用しました。
BMWはBMWの独自の技術BluePerformanceテクノロジーを使用し、PMやNOxなどの有害物質も効果的に除去しています。
X5 xDrive40dは、快適で安全なドライビングを提供するだけでなく、地球環境の保護にも貢献している車なのです。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,935㎜×2,005㎜×1,770㎜ |
重量 | 2,410kg |
排気量 | 2,992cc |
燃費(WLTCモード) | 15.5km/L |
X5 xDrive40dに試乗している動画です。
ディーゼルエンジンの高性能さや環境への配慮などを、実際の走行シーンとともに紹介しています。
出典:YouTube
トゥアレグ/ヴォルクスワーゲン
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トゥアレグは、ヴォルクスワーゲンの高級SUVで、2002年に初めて発売されました。
サハラ砂漠の遊牧民トゥアレグ族の名前を冠し、自由で強い精神を表現しています。
ディーゼルエンジンの排出ガスをクリーンにする尿素SCRシステムを備えており、メルセデス・ベンツのブルーテックとほぼ同じ仕組みです。
ですが、尿素水溶液の言い方が違ったり、尿素水溶液の消費量やタンク容量がベンツのブルーテックより小さかったりと、細かい点で仕様が異なります。
現在は3代目のモデルが販売されており、3.0L V6 TDIディーゼルエンジンと3.0L V6 TSIガソリンエンジンの選択肢があります。
ディーゼルエンジンは、最高出力286ps、最大トルク600Nmとパワフルです。
さらに、ナイトビジョンやトラフィックジャムアシストなどの先進の安全装備も搭載されており、暗闇や渋滞、交差点などの危険な状況でもドライバーを助けます。
トゥアレグは、高級感と走行性能、安全性を兼ね備えたSUVと言えるでしょう。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,795㎜×1,945㎜×1,732㎜ |
重量 | 2,297kg |
排気量 | 3,598cc |
燃費(WLTCモード) | 15.1km/L |
トゥアレグの外装を紹介している動画です。
g350ブルーテックと比べると、トゥアレグは丸い形をしています。
どちらかというと、デザインは g350ブルーテックの方が私の好みに近いかな。
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ランドクルーザー/トヨタ
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トヨタランドクルーザーは、1951年から販売されている四輪駆動車で、世界中の悪路や災害地域で高い評価を得ています。
2021年には、ランドクルーザー200からランドクルーザー300にモデルチェンジしました。
ランドクルーザー300は、軽量化や剛性向上、走行性能や安全性能の向上など、多くの点でランドクルーザー200を超えています。
3.3L V6ディーゼルツインターボエンジンは、309馬力の最高出力と700Nmの最大トルクを発揮。
3.3L V6ディーゼルツインターボエンジンの凄いところは、高出力だけではありません。
「TSWIN」という、世界初の技術が使われている点です。
TSWINは、燃焼室の壁面に特殊な膜を作ることで、熱損失を減らす技術。
熱損失が減ると燃焼温度が高くなり、燃料の燃え残りやNOxの発生が少なくなります。
TSWINのおかげで、最大熱効率は44%という驚異的な数値になりました。
前モデルのKDエンジンと比べ、燃費が最大で15%アップしています。
最大トルクも25%増え、低速トルクも11%増えました。
TSWIN搭載のエンジンは、もちろん尿素SCRシステムも備えており、排出ガスの浄化にも貢献。
尿素SCRシステムの効果で、欧州EURO6や日本の平成22年排出ガス規制など、世界で最も厳しい排出ガス規制にも適合しています。
SPEC
全長×全幅×全高 | 4,985㎜×1,990㎜×1,925㎜ |
重量 | 2,560kg |
排気量 | 3,444cc |
燃費(WLTCモード) | 9.7km/L |
ランドクルーザーに試乗している動画です。
エンジン音に注目してみてください。
スポーツカーのように重厚で迫力のある音がします。
この音には、心が揺さぶられますね。
出典:YouTube
【g350ブルーテックの全貌が明らかに】ベンツが開発した技術とは:まとめ
まとめとしまして
- そもそもブルーテックとは、何?
- 「gクラス初」ブルーテックを搭載したモデルが「g350ブルーテック」
- ブルーテックに挑むライバルたち
を、紹介してきました。
g350ブルーテックは、gクラス初のブルーテックを搭載したモデルということが分かりました。
g350ブルーテックは生産中止になりましたが、その後継モデルとしてg350dがあります。
g350dは、g350ブルーテックの魅力を引き継いでいます。
g350dに乗れば、g350ブルーテックが発売された時代にタイムスリップできるかもしれませんよ。